『山分け…』
[一瞬、ことわろうとした。
さっきそれを差し出そうとしたのは、具合の悪そうだった様子を見て、他になにも出来ることが思いつかなかったから。
けれど――うん、
先程の、微笑みにも似た表情だとか、いまこうして差し出し返してくれる、その顔を見ていると。
自然と頷いて、]
『うん!』
[にいっと笑顔を浮かべて、その提案に頷いた。
フォークで切り分けて、出来るだけ頑張って半分にしたイチゴは、きっと攻防の際に少しくらいフォークの跡がついていて、クリームも零れ落ちて、すっかり綺麗な様子とはいかなかっただろうけれど、
口に運んだその半分の戦利品の、瑞々しさと甘さが、ふっと、思い浮かぶ。]