― 公国拠点・中級将校執務室 ―
ステファンを襲撃した実行犯……
公国にゆかりある帝国人、か。
[ そう呟いて、ふと胸元に視線を落とす。
上着とタイの上から、左手を首の真下に置いてそっと抑えた。 ]
魔石じゃないだろう、と言ってた。
多分偽物だと。でも、貴石の全てには何らかの力があるんじゃないか。って……
[ 本国から送られてきた書類のいくつかを探り、目当てのそれに視線を向ける。 ]
ラムスドルフ伯爵家。帝国貴族だが領地の一部がシュヴェルベに掛かっている為、公国内地にも領地を持つ……。父ナイジェル・ラムスドルフは伯爵家を逐電し、没時は魔石科学者として名を成す、か。
氏と夫人シュテラ、息女グレートヒェンは二年前の五月に襲撃され死亡。
ノトカー・ラムスドルフはすでに仕官していて市街の屋敷には不在の為襲撃を免れたものの、同年六月のフェルゼンベルク焼失によりそちらに移していた家屋も夫人ユーリエも失い……
[ 淡々と書類を読みあげていく声が次第に小さくなっていく。 ]
ステファン襲撃実行犯と重なる部分はある、が。