[彼女と掌を重ね、静かに錠前に乗せた。冷たい金属の感触が、扉の重圧を自覚させる。それでも、彼女を信じ――女神よりも輝く愛妻と添う。各地へ撒いた呪印《アンカー》に呼びかけ、呼応を響かせ、円陣を描き、自らの精霊力を増幅させる。足元から立ち上る白い光と、黒い闇の円舞曲。自身にとって、一等大切なものはこの健気な妻で在るが、次に重用するのは、この闇影の力。永く身内で編まれた精神力を、一時枯渇させて備える一撃。身体中から掻き集める渾身の精霊術。空間を力付くで歪めるようにと、指先に迸る勁い意志。]