― 中庭 ―[レトが表に出す、王子への感情は良いものでも悪いものでもなく。ただひたすらに、薄かった。悪趣味、と笑った時。視線を廻らせれば、ジェフロイの苦い表情がうつりレトはことさらにっこりと、笑ってみせた] ね、悪趣味だよね[わざとらしく、繰り返す。王子への反応。気軽に肌を重ねるという噂。弁えた大人の態度。そして何より――リエヴルへの心酔。ひとつひとつは瑣末でも、積み重なれば、それは明確な敵意に成る。特に何をするでも、言うでもない。ひそやかに、感情を向けるだけ]