負傷兵 シモン

― �C号室：最後の手紙 ―

［――送る当ての無い手紙は、�C号室の机の上に積み重ねたまま置かれている。
　もし明日部屋に入るものが居れば、その手紙の山にいくらでも目を通す事が出来るだろう。
　そして積み重ねられた一番上の手紙には、こんな文章が書かれていた。］


『村の皆には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
　だが俺自身の望みも捨てたくない。

　正直な所、死んでしまった方が皆幸せになれると、
　今でも思っている。
　
　けれども、君たちがそれを望まないのなら。
　
　屍を越えたその先に、
　痛みを抱えて生きていく事を望むなら。
　
　俺にはそれを踏み躙る事はできない。

　だからせめて最期の時は、俺に与えられた
　最後の”役割”を、精一杯果たしてみせよう――