旅人 ニコラス

僕は一体いつになったら、懐かしい僕に”おかえりなさい”を言うことができるんだろうか？

[手のひらを温める日光を握っても、そこには何も残らない。

足の向くままあちこちの土地を歩き回っても、記憶を失う以前の知人には全く巡り合えず。
最近では少し諦めと疲れの方が勝ってしまって、二年前の秋から月狼祭のあとは狼月の村で冬を越すことにしている。
それより以前は不定期に訪れてはいても、せいぜい１か月程度しか過ごしていなかった。

つまり今年は三度目の長期滞在となる。]

……。

[懐かしい人々に再会する喜びはあっても、一旦落ち込んだ気持ちを立て直すには難しく。軽いため息をついたあと、再び歩き始める。]