― 地下迷宮の中心部 ―
[過ごした一時の余韻を愉しみ、するすると頬を撫ぜて慈しむ指先。
桜色の髪を微かに散らして弄び、指に馴染ませる彼女の色合い。
彼女の井出達は、乱れた異装より転じさせ、
今は己の裾長い上着を貸して、白皙を隠匿。
袖やら裾やらが余るのは20cmを経る身長差ゆえ。
その為、彼女が何処かあどけなく見えたとしても、
不可抗力と都合の良い言葉を添えてはぐらかす。]
―――イングリッド、
[そうして、柔い言葉で呼びかければ、彼女の眼差しを誘い。]
それでは、共に、帰りましょうか。
[彼女の手を引き、腰を支え、視線を向ける先には堅牢なる扉。
シャツの軽装が僅かに口角を引き上げ、繋いだ手に圧を掛けた。*]