[あとはあーだのうーだの、言い訳じみた何かを呟いて時間を稼ぎつつ。
再び準備完了したブーツと、めくらまし。それを猫とアイコンタクトで確認してから。]
―― Uisce ar aird an illusion agus damhsa le solas、
[、必要な過程の殆どを破棄した詠唱を、無理やりエルフ語で押し通す。エルフになじみが無ければ聞き覚えのない言葉かもしれない。
走り出しながら取り出した、術を帯びた宝石を、騎士へ向けて放つ。
現れるのはウンディーネ宛らの人魚。くるりとシェットラントの傍を泳ぐように巡って、ふっと掻き消えた。
光と水の精霊で作った、単なる幻である。それでも、召喚かと身構える一瞬があれば良し。
その間に、駆け抜けてしまえば良いのだから。*]