[ 憔悴しきった顔で、公国兵の撤退した地を眺めている。夜の底に横たわる山のような死体。まるで自分の心の中に死体が溜まっていくような錯覚。殺しても殺しても、満たされない――。あちこちで待機中の帝国兵が、傷の応急手当をしている。馬を引いて、カサンドラを奪われた現場を踏みしめ歩く。いっそあの時、二人とも殺してしまえば、というところまで思考が堕ちていた。その時、ふと。見覚えのある帽子が、土くれの間に落ちているのを見つけた。 ]