[――……あれはそうだ、卒業の1年ちょっと前。実技試験の時の事だ。ハンデを負っていることはわかっている筈なのに、それでも無理を押して動いてしまう。おそらく、身体が先に動くのだ。……心と共に。彼の出自は、在学中にはわからなかったが。立ち居振る舞いから、いずれ彼が、どのような立場で動くべき人間なのかは透ける。そのままでゆけば、いつか、大きな局面で、彼は同じように動いてしまうのだろう。そんな予感がしていた]