旅人 ニコラス

[自分には、七年より前の記憶は存在しない。]

[　目を閉じて　己の裡を探ろうと手を伸ばしても
　触れるのは　星が全て消え去った夜空よりも
　なお深い　一面の黒。]

[大怪我で死にかけていた自分を助けてくれた人によると、崖の下に血まみれで倒れていたところを発見したらしい。
虫の息だったところを、奇跡的に持ち直したそうだ。
ただし頭を強く打った衝撃で、以前の記憶を全て失ってしまっていた。

生きていただけまだまし。
そう割り切って生きていくには、自分は余りにも若すぎた。

怪我のリハビリを終えて、依然と変わりなく体を動かせるようになった直後、いわゆる”かつての自分探し”の旅を始めることとなる。]