[開かれた小箱から漂う薬品の馨が鼻腔を擽る。ベリアンが「腕です」と言っても数拍、その意味がわからない程に人の腕らしさを欠いた――腕のミイラ。漸くその物体が何なのかに気づけても彼の紡ぐ言葉の意味を、すぐには理解出来ずにいた。けれど。ベリアンが腕のミイラへ頬擦りする様子を目にした瞬間全てが繋がった。ベリアンは刑事を愛していて、その愛故に恋人に手を掛けてしまった。王子を溺愛しているのではなく、その刑事が死んでも尚刑事へと、腕へと執着していて――…]