― 回想・16年程前のお話 ―
[それは、男がまだ少年だった頃のお話。
生憎村には同年代の子供があまりいなかったし、5歳の頃に病で母を亡くしてからは、父と同じ医者を目指す為に家か図書館で本を読んでる事が多かったから、友達なんていなかった。
ある日小さな女の子が入院した。
父の親友の娘。
帰りたいと泣いていた。
少年は、おろおろしつつも、自身が子供の頃に母がそうしてくれていたように、女の子の頭を撫でた。
その様子を見て、父は兄妹みたいだ、と笑った。
お兄ちゃん、ゲルトお兄ちゃん、ゲルト兄、ルゥ兄。
少しずつ変わってく呼び名。
どこかくすぐったかったけど、心地よかった。
本当の妹だったらいいのに、なんて思った。]