[ その声には信頼が滲む。>>489
いつだったか、持っていた飴玉>>460をあげれば、嬉しそうに笑った顔を思い出す。
にっこりと笑うその顔は、幼い面影を残して。
ただ、目の下の隈が、その笑顔に否応なしに大人びた印象を与える。>>97
彼女のことは、いくらかは知っていたつもりだ。
行方を眩ませた王族側の将軍の娘。
海賊に誘拐されたと聞けば、自らの由縁も相まって。
無表情の顔の下、胸を痛めたりもしていた。
─── 私だけが助かってしまって
ごめんなさい……
声に為らず、発されずに胸の奥に沈み。
鉤状の傷を、がりがりと削る。
その痛みが、ナネッテをここへ、引き留めていた。
生きる理由を、生きなければならない理由をくれていた。
それは、生きていてもいい?と声に為らずに問うた、よく似た境遇の少女への答えではなかっただろうけれど。>>67 ]