[それを思い立ってからの飼い猫は、飼い主に媚を売る事を覚えた
彼の前では常に笑顔を絶やすことなく、
情事を望まれれば悦を籠めて喘ぐ。
そうして愛情と信頼を増長させてゆき、拘束を緩ませた。
屋敷に出入りしている商人と接触する事ができる程度ともなれば
屋敷の高価な物品を、或いは身体を代金として、
長期に渡り飲ませる事で病のような症状を齎すという
遅効性の毒を定期的に手に入れる事に成功した。
さりげなく食事に混ぜるなんて事は、
貧民街で掏摸を糧に暮らしていた手癖の悪い猫にはお手の物。
しかし、
日課である毒を盛っている所を、主人に見つかってしまった]