[水雷の起爆が間に合ったにしろ、相手方の船の衝角が激突すれば船底への浸水はまず避けられず、母艦へ戻っている余裕のある距離ではない。
僅かな。――…本当に僅かな猶予が残されているだけで、数分後、自分の乗る船が数日前にシコン港で見かけた艦>>0:34のように海の藻屑となるのはその事態が訪れる前に既に見えていた。]
[…後は。]
…逃げられる余裕のある者が居るのなら、逃げてください。
戦況を、第三艦隊に。
[手近な乗員を捕まえてそう伝える。
水雷の弾ける音がした。嗚呼、時間がない。]
私は…小生は此処に、残ります。
中佐に預けられた――船ですから。
[急ぐようにと言い含めて私は身を翻す。]