私、好きな人がいたんです。
その人のことを忘れるために、ここへ来ました。
[いた、と過去の言葉にすることだけでも、胸が焼け焦がれてしまいそうだった。
目から雫が溢れそうになるのを、必死で押し留める。]
だから私、ここに来る資格なんかなくて。
皆さんが誰かを好きになろうとしている中で、私はもう、好きが何なのか、よく分からなくなっていて。
だから、神父様の質問に答えられないんです……。
ひどい人間でごめんなさ……い。
[笑おうと目を細めれば、思わず涙が零れた。
一度流れ始めれば、それは止まってなどくれなくて、次から次へと溢れるそれに溺れてしまいそうだった。]
[初めて誰かに話した気持ちは、どこも綺麗ではないどろどろとしたもので。
嫌がられはしなかっただろうか。不快な思いをしなかっただろうか。
そう思えば思う程怖くなって、ぎゅう、と目を瞑った。]