[持ち込んだ鞄から、こっそりとあるものを取り出す。
――毛糸と、編み針。
編んでいるのは単純な網目模様のマフラーだ。
毎年の宿への滞在。
ずっと、レジーナに何かお礼がしたいとは考えていて。
目が悪いから、宿の手伝いは殆どできない。
最初の冬、掃除や料理に手を出して余計な仕事を増やしてしまったことを思い出す。
「見えない」自分に、できることなんてあるのだろうか。
ずっとそう思ってきたけれど、こういう形で感謝を表すこともできるのだと。
――とある人にこっそり、編み方を習ったりして。
これが完成するまでは、レジーナには内緒の約束だ。]