[瞼を閉じた。それは死者を悼んでいるのか、それとも……]
こんな時だからこそ聞くが。あくまで、私人として、ね。
騎士団を、恨んでいないかい? イングリッド。
[騎士団は組織。だからこそ、守れないものがある――
二つの助けの声に、伸ばせる手は片方だけ。
声の大きな方を選んだのは、ソマリアードであり。
そして、命令違反を侵して単身、大物の魔物に向かおうとしたイングリッドを咎めたのはソマリアランだった。戦える力がありながら、その場で戦わなかったアラン、そしてイングリッドの縁者を結果として身捨てる判断を下したのはアードだ。
何故、彼女は騎士団を離れた今も、情報屋として働くのか。
騎士団でできなかったことをやるといえばそれも一つの正義に聞こえよう。
でも、本当の君が知りたいんだ。
そんな、透明な眼差しを向けていた*]