― 回想/卒業後 ―
[友人の結婚式の招待状は、自分の手元までは届かなかった。
公国からの私的な手紙と知られ、途中で誰かに処分されてしまったのだろう。戻ったのはそういう家だった。
ただ、ヴィンセントを通じてだったか、後から知ることだけは出来て]
そうか、レトはあの子と。教えてくれてありがとう。
……手元にもう少し残しておけば良かったかな。
[もう針を手に取ることはなくなっていた。あの少年の人形が、やはり最後の作品となっていて。
手元に残してあるのは色違いの習作一つのみ。それも箱に仕舞って寝室に隠されている。
目立つ事も出来なかったから、結局カードを一枚だけ密かに送った。眠っている兎と、読み手をじっと見つめる兎の描かれたものへの署名は、姓をつけずにウェルシュとだけ入れて*]