― 回想 ―
[帰国後、トールの本名を知れば、確かに軽い驚きが胸にあった。
ラウツェニング公の長子、即ち公王の孫であれば主筋である]
───トルステン殿下。
[国許での友との再会は、堅苦しいものとなった]
ベルンシュタイン侯爵の末子、ディーク・フォン・ベルンシュタインです。
シュヴァルベでは過分なる交わりを頂き、光栄の至り。
以後も変わらずお見知りおき頂ければ、幸甚に存じます。
[口にして、さらりと丁寧な礼を向ける。
貴族の礼儀に完璧に則った礼であったが……
公式の場を離れると、崩れるのもあっさりと早かった]