[箱入と言っても過言ではない彼女は、大切に育てられた姫君。
己が娶った後も、その精神を穢すことなく囲い続けた。
小動物のように懐く伴侶を微かに揺らしてあやし、
今あるこの時を存分に満喫。>>485]
―――…おや、どうかしましたか?
[元々、勇者が生まれれば加護を与え、
英雄が立てば栄光を授ける光の精霊とは一線を画す存在。
気まぐれと名高い風精以上に、闇精は人から遠い。>>486]
その内に、もう一度逢えるかもしれませんが。
イングリッド、ヒトを見たことはありますか?
[トン、と枯れ草踏んで、森の終わりに近づいていく。
その先に見えるのは、廃墟めいた研究施設。
視線を緩く持ち上げ、外観を確認すると、と腕の中へ向け、
建屋です。と、ややズレた男が告げた。]