――六年前の春――
[卒業していったのは、何もトールだけではない。
トールの親友であり、そして寮で世話になったディークもまた、学校を巣立っていった。
彼は突然ぶらりと部屋に来ては、ごく当たり前のように、紅茶を飲んでいたりして。
なかなかどうして、つかみ所のない人物であった。
トールとの時間を邪魔されていることを苦々しく思いながらも、トールの手前、それを言うことも出来ず。
また、紅茶を美味しそうに飲まれると、それだけで機嫌が直ってしまいそうで困る。
結果、わざとふて腐れたような表情を作っていたものだ。]