―― 一年後の春の夜――[馬車に乗り込めば、あとは幼い頃に耳にし、怯えた“あの音”に乗せ、少しずつ学校が遠のいて行く。その風景を心に刻み込むことすら出来ず。ただ、静かに唇を噛む。――――大事な人に、別れを告げることも出来ず。最後の時すら、与えられぬままに。流れゆく景色は、酷く、滲んで見えた――…。*]