残念だが私はアースガルドという国を、そしてこの星系のことを詳しくは知らん……。
長く戦乱が続き、争いが憎しみを生んで憎しみがまた新たな戦乱を呼ぶ……そんな、はるか昔から宇宙によくある風景の一つ、という程度にしか、な。
地球のある民族がルーツらしいな。
そのルーツもまさに好戦的。侵略によって国土を広げていったというじゃないか。
……宇宙に出ても、その血は争えぬ、ということかね。ふん。
私は暴力を好まぬよ。対立が避けられぬのなら、血肉を直に削らずとも戦うすべはある。それこそが知的生命であるという証だろうに……。
[ たとえその戦うすべというのが、決して彼が語るほどに知的なモノかどうか疑わしくとも、彼自身はそれこそがヒトのあるべき姿と信じて疑わない。 ]
『神々の黄昏』、かね。
そんな終末論がまかり通るから、あのような噂が真実味を持ちもするし、何をしでかすかわからぬと見えるから、こうして視察も必要になるわけだ。ふん。*