― 塔の裏手 ―
…あ。
[ラッキーには違いないが。
はためかせた軍服が六角棒に巻きついて阻害したのまでは狙い通り。
ただ敵将がそれを嫌って外そうとしたときに釘バットが当たるのは虫が良すぎる話だろうと思っていた、戦場は何が起こるか分からないものだ]
おしっ!
この隙にずらかるよッ! 全力前進!
[先程はペース維持に努めたけれど、思いがけぬ負傷を与えたことで追撃速度は鈍るだろう。
これならば急いですれ違いポイントがずれたとしても、逆回りの手下たちがぶつかるポイントの方に影響は出ないと思われる。
何よりこれで恐怖から脱することができると安堵の念がよぎる手下を抑えつけるのは不可能に近いのもあり――同時に、これはさらに怖いことになるという新たな恐怖から逃げたくなったのもある。
ここまで走ってきたことの疲労感を忘れなおし、敵将から徐々に距離がとれ始める]