― 宿屋への道 ―
あ、アルビンさん。おはようございます。
[冬の間、風花の村にやってくる行商人の姿を見つけて、丁寧に挨拶をした。
基本的にドジで抜けている自分が、一つだけ厳格に守っている決まり。
”自分がされて嫌なことは、決して人にしてはならない。”
物心つくよりずっと前から、青年は他人から詮索されることが何より苦手だった。
たまに村の外から来た人が描いた絵に目を止めても、興味が己に向くと分かると、接触を避けてばかりいた。
だから、アルビンについては”冬になると村に帰ってくる人”以上の情報は知らないし、また知ろうとも思わない。
それでいて、年上に対する節度を守りつつ、アルビンからどのような対応を受けても、気さくに話しかけている。]