[小さなころはよく泣いていた幼馴染も、10を超えてからはあまり泣かなくなった。
それが、ただ泣くところを見なくなっただけだと気づいたのは、物陰で声を押さえて嗚咽している彼女を見た時。]
(なあ。まだ泣いてるのか?)
(やっぱ泣き虫だよなおまえ。誰の時でも泣いてんじゃん。)
[今思えば、ひどい言葉を掛けたもんだなとも思う。
思ったことを、そのまま声に出した言葉。]
(お前が泣いてたら、おばちゃんだって安心して死んでられないだろ。)
(ほら。泣くなって。)
[なんて、汚いタオルを差し出したことまで思い出した。]