― 公国拠点・作戦会議室 ―
[伏兵の任に諾を返したのち、ディークがボルドゥ中尉と呼んだ男に視線を向ける。>>>317
士官学校時代によく見かけた顔――― 一級上の、エルンスト・ヒンメルと良く似た男。
記憶に残るヒンメルは眼鏡をかけ甘味を好んでいたはずだが、彼を特徴付けていた銀枠は目の前の中尉にはない。]
………、はい。
余り多くても潜伏が困難ですが、
大尉麾下の一隊ともあれば対応力に不安を抱くこともない。
ボルドゥ中尉でしたか、中尉が受けてくれるのであれば。
[ディークの提案に頷く。
個人的な問いを向けるべき場所ではないために、彼の出自をこの場で問うことはない。
けれど、知己と似たその男を見据える視線には、少しばかり疑問の色が揺らめいた。]