― 城館・ホール ―
ロー・シェン、か。
[先ほど、レトに名乗った名を唇の内に繰り返す。
神の狼、などと御大層な名の中に潜む力。
口にするたび、未だ縛を感じるのに微かに苛立つ。
名付けの呪。それに伴う力の授受。
あの規格外の真祖が何を考えていたかなど、
知るべくもないし、知りたくもない。
ただ、それが禍と益双方をもたらしたのは事実。
自分の親が四人に増えた息苦しさもまた事実。
人としての両親と、血族としての血の親と、名づけの親。
人間の親はともかく、いつまでも越えられない相手がいるのは、実に不愉快だった。]