負傷兵 シモン

― �C号室：あてのない手紙 ―

『親愛なる妹へ

　ついに人狼騒動が始まった。
　やれることは"演った"。
　ここまですれば、狼たちもきっと放置する事は出来ない。

　けれどもそのおかげで、兄ちゃんはついに悪魔になってしまったみたいです。


　――俺は、兄ちゃんは、ただお前たちに会いたくて。
　でも丈夫に生まれたばっかりに、
　何遍首を吊っても、
　凍える夜に野垂れ死にそうになっても、
　一向に"そっち"に行ける気配がありません。


　だから、もう一度あの時のように、
　人狼たちに出会えたなら。そうしたらもう一度
　あの青い世界《てんごく》に帰れると思ったんだ。

　人狼騒動さえ起きれば望みは叶うと思ってた。
　けど、そのために俺は、村の人達を殺し合えと唆し、
　人狼の牙さえも利用しようとしてる。
　
　村を混乱に陥れる悪魔の正体が、
　人狼も村人も全員騙して自殺を企てた、
　ただの死にたがりだったなんて知ったら、
　皆いったいどんな顔をするだろうね？』