[宿まで大した距離でもない。送らなくとも平気かもしれないが、何となく躊躇われた。手を引くことは出来ないが、荷物くらいは運べる。荷物を持とうと、ん、と手を差し出して。] 薪割り終わったから、飯食いに。[宿に行く理由をそう告げる。パン屋は明日行けば良い。] ……寒くなるこの時期は、少し辛いがまだ平気だ。[素直に答える。耳の良い彼女に、誤魔化しても無駄だろう。足音の変化など、自分自身気付いていない。二つの杖の音を響かせ、宿へと向かった。]