― 塔の街・宿の一室の朝 ―
――あれ?
[身体に残る気だるさを冷たい水で押し流そうと、金貨は腕の中にいる愛し子を起こさぬように身体を起こし、部屋を出ようとするのだが――…
はて、この部屋の扉はこんなに豪奢だっただろうか?>>302
セキュリティは万全といわんばかりの閂と錠を見れば、自分達はこの部屋にどうやって入ったのだろうと、首を傾げた。
未だ眠る愛し子と二匹の双頭犬を背に寝ぼけ混じりの思考を続けていた金貨の脳に、趣味の悪いモーニングコールがやってきたのはそんな時だっただろうか>>298>>301>>302。]
――っ!リヒャルトさん!!
[脳を揺らすように響く声、その内容を深く反芻する前に金貨は愛し子の方へ意識を向けた。]