― 塔 ―
[気がつけばこの前にいて。
無我夢中で泳いできて衣服が瞬時に乾いているのに今気がついた、というのは虫が良すぎる話か。
何にしても、灯台だと思ったのはどうやらこの塔のようで――岬に建っているわけでもなく別のものかもしれない。
ただそんなことに頭を使わないのが賊というもので]
おたからの貯蔵地に困ってたのよねー。
宮殿に置いとくのもなんか物騒だし。
せっかくだからアジトとしていただいちゃいましょ。
……守備兵がいる?
ふーん、さほど多くはいなさそうね。
[見上げれば、確かに塔の灯り取りから人影が窺い知れる。
ここまで個人としか出会ってきていないが、自分たち以外の"集団"を初めて認識。]