ならず者 ディーター

─ 現在・自宅 ─

［──ドンドン！
唐突に自宅の扉が陽気な声と共に、元気よく叩かれて若干飛び上がる。
デリバリーサービスです！と言った娘の顔を拝んでやるために、玄関の扉を開く。

──昨晩よりは、元気そうか──。
ニコニコと笑顔を浮かべる娘の顔を見て、一番にそう考える。
昨夜は暗がりだったとはいえ、大きな満月に強く照らされていたし、手元のランタンもあった。だから、いくら暗いとは言っても彼女の顔色を見るには、十分だっただろうと思う。

ジムゾンとカタリナ越しに目が合ったりしたかもしれない。>>66
もしそうだったなら、そのままお前が言えよ、とでも言いたげな顔をしただろう。
あの時、恐らく此方が口を噤んだのを見ていただろう。周囲を気にするから、気にしたりしただろうか。──いや、してないか。］