―― 記憶 / テオドール ――
[最初に会った時の第一声に絶句されたのを覚えている。]
そっかあ、違う人なら、違うんだ。
[そんな風にけらけら笑って頷いた自分が、それから幾度となくテオドールに投げかけることになる『子ども特有のなに、なんで』は、
きっと、その時の年齢には似つかわしくないほど幼いものだったろう。
十五年前に船について、まともにヒトと話せるようになるまでいくらかかかった、更にその後のこと。
十を優に過ぎた子どもの口にする言葉としては、少々異様であったかもしれない。
機関室では暴れたりはしゃいだりはしなかったけれど>>347、やらかしたことがなかったといえば嘘になる。
たまたま大人たちが出払っているときに、鳴り響いた異音と点灯した赤いランプ。
慌てて駆けよれば、機械が熱を持っていた。
廊下に飛び出して人を呼ぼうとしても、どうしても誰も見つからなかったから、
必死になった自分は、厨房に走って両手にバケツ一杯の氷を持って帰ってきて、
“熱が出たら冷やせ”、を忠実に実行したわけである。
かくしてエンジンは全員泣いた>>399。
そのままいえば、水がぽたぽた滴る感じになった。
――なお、その後しばらくの間、機関室の前の廊下に『わたしわ きかいに こうりをのせました』と書いた札を首にかけた子供が、セイザの体制で暫く座ることになったとか。]