[――と、声を掛けて男は息を呑む。
>.460這いずって船縁へと向かおうとする軍医の姿。予想以上に重傷だった。]
…っ…、軍医殿…!
無理です。
二人はもう…。
それよりも貴方の傷を!
[それでも彼は船縁へと行こうとしていただろうか。
男は懸命にその場に留めようとする。
あぁ、すぐに止血をしないと。
患部に当てて圧迫止血を図ろうと、慌てて軍服の上着を脱ぐ。
左手の三角巾は邪魔だったので外してしまった。肩がずきりと痛むのがこれが現実だと知らせていた。
それもついでに脇腹に宛がおうとしたが叶っただろうか。]