[誰かに頭を広い手で撫でられると無邪気に笑い。もらった葡萄のひと房は、自分が半分。背伸びをし、めいっぱい片手を伸ばして、残りは父親と、葡萄をくれた人の口に運んだ。疎らな記憶の帰り道、大きな父の手を握る反対の手には青色の切り花が握られていた。青色の可憐な花は母親に渡すとたいそう喜ばれ、枯れるまでひっそりと母子の部屋の窓に彩を添えていた。]