[宿への道中、シモンと何か会話はあっただろうか。
彼がパン屋へ向かうと知れば、宿への手土産にと寄り道する気にもなっただろう。
ともあれ、そんな穏やかな時間がいくらか過ぎ、今は宿の入口に。
玄関に程近い食堂兼談話室からは、朗らかに談笑するレジーナとディーターの声が聞こえてくる。>>440
冬は雪が降るからか、外気にはいくらか寂しさが混じるけれど、
この宿屋にはいつも活気が溢れていて、毎年来ていても飽きることはない。
玄関を開け中へと足を踏み入れれば、すぐ左手のドアから暖かな暖炉を思わせる匂いと、薪の爆ぜる音。]