― 一年後の春の夜 ―[僅かな荷物だけを手に進む人。渦巻く風は今宵の月のように冷ややかだ。春なのに。その冷たい風に乗って、小さな悪態>>415が届く。置き去りにせねばならないものはどれだけ多いことだろう。一瞬、ルームメイトを呼びに戻りたい衝動に駆られ。けれどその衝動に身を任せる隙はなかった。この場に居合わせてしまったことすら、本当は許されないだろうものであり]