[淡々と、しかし小さな体で踏み台を駆使して縦横無尽に黒板を書き、知的ではありつつも熱意を持っていた教官であったときも。 何事にも動じず、年長だろうが大男だろうが議論に挑んでゆく軍事技術局の時とも。 時折見せる、くだけて遠慮のない物言いをする友人としての顔とも。 そのどれとも違った。 表情こそは、魔女と呼ばれた冷静沈着な様子でるのに。 瞳には意志の力もなく、声にも力がなかった。あるがままに何もかもを受け止め、吐き出すしかできない。]