― 使用人控室 ―
[――向かうは使用人控室だった。
ディークに殴り掛かられた、という話も耳にしていたし
リエヴル風に言えば、"気掛かりで追い掛けた"とも言えるが。
まあつまりは――単なる興味に過ぎず。
尤も今現在、ベリアンの脳裏に自分の貌が浮かんでいたとは
知る由もないが、不思議と男の脳裏には一丁の銃が浮かんでいた。
銃把に王家の刻印の入った自動拳銃と幾つかの弾倉。
非公式で下町の市場に行くのだと聞かぬ王子の伴で
他の古参Esや近衛兵と共に流民になりすまして顔を隠し、
出向いた数年ぶりの街の空の下で。
死んだ目をした子供に渡したのは気紛れだったのか、或いは。
否、それ自体が男の妄想だったかもしれないけれど。]