― 公国軍前進拠点の一角 ―[旧くからのこの友が自分のかつての名を口にする時は大抵、そのエキゾチックな顔立ちに揶揄うような笑みが浮かんでいる。婚約を告げた時には、きっとベリアンなりの祝福交じりに。任務で下手を踏んだ時、再奮促す為にか「レト」と呼ばれたこともある。だが、今は違う。漂う重い沈黙に、首を傾げるのは此方だった。] ………どうした。 [カサンドラ技官の事か。或いは准将の事で話でもあるのだろうか。まず意識は先の戦に向くが。]