― 旅立つ以前、永遠の途中 ―
[古の吸血種は何故かベリアンだけに良く懐き
吸血種とは思えぬ従順さで、ベリアンの言う言葉だけを理解した。
ベリアンを「アステリオス」と、そう呼び
まるで、ベリアンしかこの世に存在しないかのように、
それ以外は何も欲しくない、とでも言うかのように。]
――あのだな、ベリアン…、
[幾度か、王子が"消失した"事実をベリアンへ告げた。
この、古の吸血種が王子と入れ替わったのだということも。
けれど、ベリアンはそれを受け入れなかった。
王子を待つと、その姿勢を変えることはなかった。
けれど、そんなベリアンの横顔は、以前よりも嬉しそうに見えた。
還らぬ人を待つ――
意識はそれよりも、目前の男に注がれているようだった。]