― 三日目 ―
[微妙な距離感を築いての出立は最早何度目か。
京都奈良と渡ってきたが、本日も県境越えの横断行程。>>238
寝不足を示す欠伸を噛みつつ、兄は口元を掌で覆い、呆けていた。
それでも確り妹の隣を陣取るのは最早本能で、
教師の言葉に耳を傾けながらも妹を盗み見る様は通常運行。
説明もそこそこに自主性を重んじる教師の信頼を背負い、
荷物を乗せたバスを見送れば、奈良の陽の下へ放り出された。
本日も朝日が眩しい秋晴れ。
己は軽く背骨を空に向けて伸ばし、関節を鳴らす。
ベルトループに下げた淡紅色の秋桜にちらちら追従させながら。]