[男は彼の厭う邪で出来ていた。
泥が触れた場所から彼の身を夜の気配が侵食する。
前戯とも言えぬ児戯であるが、幼心を有する彼には丁度良い。
さて、天の調べを謳う彼の唇は、斯様に濡れていたか。
閃く舌は婀娜を持つ紅であったか。
彼の神聖が警鐘を鳴らせども、変化はネロリの香りを甘くする。
それが猛進であれば、彼が持つ光も本能のまま強く抗っただろう。
だが、男が教えた違和は、陽が落ちる速度よりも緩く。
洛陽に歯止めを掛けるなど、其れこそ神にすら難なること。>>339]
――――……、
[無垢に出来ているのに、彼は悪事以外に明晰だ。
楽し気に開いた腕が、小さく揺れ、五指を折る。
地の底へ供物を捧げる引力が微かに増して。>>340]