この目で――…目の前で、見た。[赤い瞳に、鋭い牙。大きな体躯に長い爪。思い出すだけでも恐ろしい、獣の姿。男の右目に少しだけ恐怖の色が宿った事に、ニコラスが気付くことはできただろうか。] ん、ありがとう。[左目の傷へと塗られていく薬。瞼を持ち上げられたとて、その奥の瞳は何も映さない。時折ふわりとした感覚を覚えるのは、麻酔のためか。体内に取り込み過ぎないように気をつけてはいるが、こればかりはどうしようもなさそうだ。]