[ やがて、慌ただしくも力強く、ストンプの船大工達は、彼等の領主の願いを叶える為に腕を揮い始める。
口では文句を言いながら、手を休める事も、手を抜く事も無い彼等の熱意は、恐らく国に尽くす為ではなく、彼等の仕事を真に理解し、その出来映えに心から喜ぶに違いない若き領主の笑顔の為に醸されているのだろう ]
[ 船の事はウェルシュと船大工達に任せ、男は、ストンプ近くに駐留する部隊や、ドック入りしている船から降りて陸で休暇を楽しんでいた筈の海兵達を呼び集める伝令や、彼等を使える艦に振り分ける手配を進めていく。
モルトガット帝国艦隊来襲の報は、すでに軍人達の間にも広がっていたから、急な招集や命令に対する混乱も少なく、艦隊編成は着々と形を為していく。臨機応変を旨とする、ウルケル海軍の軍規が、ここでも効果を発揮しているのは確かだった ]