― 太古の森 ―
[振り切った者たちが後を追ってくる事は知らぬまま。
道を駆け、森へと近づくにつれて感じるのは静謐の空気。
緑の内へと駆けこんだなら、より一層強く感じるそれは、どこか馴染んだものに似ているような気がして。
それに僅かに気を緩めた──のは、束の間の事]
……っ!
[微かに届く、大気の震える音。
馴染んだその音に、反射的に手綱を引いて馬を止めた。
その眼前に、数本の矢が突き刺さる]
『ルディ、これ……!』
わかってる。
[矢羽になされた意匠は、自分たちも良く見知ったもの。
同じ伝統を守り、受け継ぐ者の手による品なのは、一目で知れた]