ありがとう、腹ペコで待っている兄さんも喜ぶよ。[店内へ入れて貰って少し後兄が好きなダルニツキーを二つ──どうやらお勧めでもあったらしい──受け取って口許を緩め頭を下げれば、数歩離れたところでふと立ち止まり、ドアに手を掛けたまま振り返る。] ところで……今日はなんだか寒いんだね。[別れ際に言い残したのはそんな一言。その時はまだ、何も気づかずにこの店の中が冷えているのだと勘違いしていた。]*